サラブレッドのつながり
アイルランドと日本が共有する競馬の伝統
競走馬の血統に国境はなく、サラブレッド生産の世界では、アイルランドと日本は親戚のような関係になっています。日本とアイルランドは世界トップクラスの競走馬を生産しています。アイルランドは純血種として知られる競走用サラブレッドの世界第3位の生産国です。
日本は世界のサラブレッド生産大国の仲間入りを果たし、今では世界第5位にランキングされています。アイルランド産馬との交配がますます進んでおり、アイルランドの繁殖牝馬と日本の種牡馬から生まれた仔馬は両国の長所を受け継いでいます。
これらの若い牝馬や牡馬は単に血統書に示された存在ではなく、世界中の競馬場で勝利を重ねてきた両国の伝統の結びつきを体現しています。
アイルランドで生産・調教された競走馬には日本の競馬界で高みを極めてきた長い伝統と歴史があり、蹄の音が轟く競馬場から北海道の生産牧場まで、卓越した血統の物語が紡がれています。
チャンピオンを生み出す
アイルランドに深く根づいている競馬とサラブレッド生産の伝統は、長きにわたりスポーツ以上の意味を持ち続けています。それは農村社会を支えるとともに、全国の大きな雇用源となって、多大な経済効果ももたらしてきました。この業界における世界的リーダーとしてのアイルランドの地位は、ヨーロッパ以外の国からも注目を集めています。
日本はアイルランドと最も強い結びつきを持つパートナーの1つであり、同じ情熱を共有しています。日本のバイヤーはアイルランド産のサラブレッドを購入することが増えており、大陸を超えて両国に文化的・経済的に重要な関係が築かれています。
目を引く例としては、アイルランド・キルデア県にあるモイグレア・スタッドで生産され、日本で調教された競走馬マッドクールでしょう。マッドクールは2024年、格式高い日本のG1レース、高松宮記念で勝利を収めました。
高松宮記念でのマッドクール
日本におけるアイルランド競馬
毎年、日本では約1,600万人が競馬関連イベントを目当てに競馬場に押し寄せます。ジャパンカップなどの最高峰のレースには10万人を超える観客が集まるほか、生放送を通じて世界中で視聴されます。
このつながりは、数十年さかのぼる1983年に始まりました。当時、アイルランドで調教された牝馬スタネーラがジャパンカップで勝利して、競馬界を驚愕させました。その勝利がきっかけとなり、両国の長い絆が生まれました。そうした影響は今なお続いており、1990年以降、東京競馬場で行われるジャパンカップの優勝馬には毎年、アイルランド大使賞が授与されます。この伝統は、東京で初めてセント・パトリックス・デーのパレードが行われた1992年よりも前から続いています。
両国の競馬にまつわるパートナーシップは、毎年、格式あるレースによる独自の交流を通じて続いています。毎年8月にはアイルランドのレパーズタウン競馬場でタイロスステークス、10月には東京競馬場でアイルランドトロフィーがそれぞれ開催されます。
今日では、競馬におけるアイルランドと日本のつながりは歴史的なものにとどまらず、日々の営みの一部になっています。北海道ではアイルランド人コミュニティのメンバーが日本のサラブレッド生産・競馬産業の発展において不可欠な役割を担っており、アイルランド人所有の牧場で業務に就いている人もいます。
次代に手綱をつなぐ
近年では、100人以上の若手日本人プロフェッショナルがアイルランドへ渡り、数カ月間にわたって、各地の町村で騎手や訓練生として働いています。アイルランド・サラブレッド・マーケティング、ゴドルフィン(Godolphin)、アイルランド競馬学校(RACE)、アイルランド・ナショナル・スタッドが受け入れを行っており、アイルランド競馬界の中心で貴重な実務経験を積む機会が得られます。
アイルランドと日本では、新たな才能を育成する伝統が確立されています。1994年以来、アイルランド・サラブレッド・マーケティングは日本中央競馬会競馬学校の成績優秀な騎手候補生の後援を行っています。この賞は駐日アイルランド大使自らが授与します。これは1992年から1995年まで同校で指導し、優れた実績を残したアイルランドのマイケル・ケネディ元騎手への敬意を表すものです。
オリンピックの栄光から学生たちの競技まで
アイルランドは馬術分野で比類のない評価を得ています。アイリッシュ・スポーツ・ホースはその多才さと勇敢さで世界的に知られており、オリンピックの総合馬術分野で長く世界をリードしてきました。アイリッシュ・スポーツ・ホースのスタッドブック(血統登録台帳)は、過去29年のうちの24年で、世界競技馬生産連盟のスポーツ・ホース・ランキングの首位を占めており、現在も世界をリードするスタッドブックになっています。
この伝統は、2024年パリオリンピックで誇るべき節目を迎えました。日本の馬術チームが総合馬術団体で銅メダルを獲得したのです。馬術競技においては実に92年ぶりのメダル獲得でした。チームにこの栄誉をもたらした馬の1頭は、アイルランド生産馬であるMGHグラフトン・ストリートでした。
アイルランドと日本の結びつきは、プロ競技の場にとどまりません。長年、東京のアイルランド大使館は全日本学生賞典障害馬術競技大会を後援しており、団体戦の優勝者には、国や世代を超えて分かち合う敬意と伝統、スポーツの喜びを象徴するものとして、アイルランド製クリスタルのトロフィーを贈呈しています。
何十年もの間、調教師、馬主、騎手、訓練生、厩務員、装蹄師、獣医師、教官、生徒は両国間の緊密な友好・協力関係から恩恵を受けてきました。互いに学び合い、技術や経験を共有し、学んだことを本国に持ち帰り、あるいは現地にとどまって新生活を築きます。
1980年代と90年代にプロフェッショナルの交流として始まったものは、さらに永続的なもの、すなわち競馬への愛と、分かち合ってきた伝統とが形成するコミュニティへと成長しています。